【The Wonder of Christmas クリスマスの魔法】

子育て

それは2009年のクリスマスのこと。
五反田の六本木ヒルズ行き都バス乗り場でバスを待っていた。
「六本木に着く頃、けやき坂のイルミネーションがキラキラする頃だね、楽しみだね。」と、娘と話していたから16時過ぎだっただろうか。
その頃の私はまだまだ覚悟の足りない人間で、2人きりのお盆やクリスマス、お正月というのがどうも物悲しくてダメだった。
自己憐憫に浸る甘い母だったのだ。
今思えば、その日もそれではいかん!と奮起してあちこちに出かけるように努めていた私が、自分の心にけしかけたクリスマスイベントの日だった。
娘の方がずっと大人で、弱虫な母には気付かないふりをいつもしてくれて、その時もお気に入りの水色のコートを着て、楽しみだねえと笑顔だった。
しばらくして、私達が並んだバス停に、薄いパープルにモスグリーンの服を上品に重ねて着こなした女性がやってきて、隣に立ち、唐突に私に話しかけてきた。
「ねぇ、あの子、あなたの子?」
少し離れたところで、無邪気に覚えたてのバレエのパをやったりしている娘を見ながら、
「あ、ハイ…」
と、ちょっとだけ戸惑いつつ答えると、
「あの子は活躍するわよ」とこれまた唐突におっしゃる。
「???…」
60歳くらいだろうか、
占い師?
ただの世話好きな街のおばさま?
詐欺師?
ちょっとだけ病んでたり?
あぶない人?
と警戒心がむくむく湧いてきたところでバスがきた。
なんとなく離れたくて、一番後ろに乗り込んだが、そのおばさまは隣りにやってきて座り、
「この子は、あなたを助ける為に生まれてきたのよ」とたたみかけてくる。
「私が会う子供は決まっているの。もうあなたにも二度と会うことはないから、あなたの先のことで聞きたいことがあるなら、なんでも聞いて」と娘にもおっしゃるではないか。
怖い…ちょっとだけ。
でもバスの後ろだし、逃げられないし、
それに、
言ってることは怖いけど、
物言いも見た目も穏やかで、
ええい、この際、色々聞いちゃえばいいんじゃないかと思い、「おばさまに伺いたいことはない?」と娘に聞くと
私に小さな声で、娘がささやく。
「ママ、この人は悪魔よ」
『エーッ!娘までおかしなこと言い出したぞ。それとも子供には見えるのか?』(心の声)
というわけで、
そのおばさまからは娘の未来について聞き出すことはできなかった笑。
本当は何かを話したのだけど、娘のささやきで、なんだか小さなパニックになり、覚えていないのだ。
未来からきた、悪魔かもしれない、おだやかで怪しいおばさまは、
クリスマスの日に、六本木の雑踏に消えていった。
私を助けるために生まれてきた。
確かにね。
娘には私とは異なる人生があり、誰かを助けるために生まれるなんて、あり得てはいけないのだけど。
どう考えても私は助けられてきた。
彼女のおかげで少しでも人生を楽しもうと思えてきたのだ。
先はどうだろう。
活躍しますか?笑笑。
彼女が毎日楽しければそれで良い。
先のことなど聞かなくて良かった。
だけど私はあれから強くなって、
いや強くなりすぎて、
私と娘の毎日には「物悲しさ」のカケラもなくなってしまった。
だから、私は、もし本当にいるのなら、サンタクロースに会ったのだと思うことにしている。
もちろんあれから一度も会っていない。

Wishing you and your loved ones all the wonder and magic of Christmas.
あなたとあなたの大切な人に奇跡とクリスマスの魔法が訪れますように。

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