【女の生き方】

どう生きるか?

高校生の時、姉のボーイフレンドに、「大人になったら何になるの?」と聞かれた。
「今は法曹になりたいけど、途中で辞めて寺に入るつもり。だからね、結婚はしないと思う。」
姉の友人は良い人で、変わった妹だなと露骨な顔はせず、「あなた、面白いね」と優しく笑った。
実際は法曹にもならず、結婚も一度してみたし、今のところは寺にも入ってないが、予想通りなんとなく面白い人生を送っているような気はする。

瀬戸内寂聴さんが亡くなった。
99歳、大往生である。
多くの若い人にとって、彼女はあくまで寂聴さんで、
京都の寂庵や全国で、失意の人を励まし説法をする僧侶の印象ではないかと思う。
寂庵も訪ねたことはあるが、
私にとって彼女は、ずっと作家「瀬戸内晴美」だった。
ちょっとませていたのか、瀬戸内晴美の名作『夏の終わり』が中学生の時から大好きだった。
一緒に住む相手が居ながら、寸暇を惜しんで(!)もう1人の男に会いに行く、確かそんな話だったと記憶している。
今でもそこら中にありそうな、ベタな不倫話が、なぜか彼女の筆にかかると、格調高く仕上がって、
主人公が、「どうしようもなく不道徳なのに、女のサガを貫く魅力的な人間」に感じられることが不思議だった。
大人になってから、本人も作品を地で行く、波瀾万丈の人だったのだと知る。
「法曹にはなりたいけど、途中で辞めて寺に入り、結婚はしない予定の」高校生は、
気がつけば「瀬戸内晴美」そのものに、作品を通して色々と影響を受けていたのかもしれないと思う。

デジタル社会で、恋愛も、人生もさま変わりした。
それでも、人間がどうしようもなく情けなく、愛すべき存在であることは変わらない。
好きだけど嫌い。
嬉しいのに泣いてしまう。
悔しいのに笑ってしまう。
厭世的なふうを装い、しっかり生きることに執着する。
AIなんかには予想もつかない、いつまでも、わけわからない、矛盾を抱えた「人間」でいたい。
合掌。

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