7年前、猛烈な背中の痒みで私の更年期は幕を開けた。
その痒みが更年期症状の一つだと気づいたのはもちろん後から。
定規でゴソゴソやっていては埒があかず、昔懐かしい孫の手をわざわざ購入するほどだった。
その後、怖くて電車に乗れなくなった。
子供の習い事のお迎えに行って、いざ帰ろうとして電車のドアが開くと、途端に中で倒れるかもという恐怖が襲ってきて乗れない。
「ごめんねー、ママちょっと怖いから次の電車でもいい?」と謝って、次の電車が来るとまた間際で乗れず、ホームで立ち尽くし、子供に謝って結局タクシーで帰る、というようなことを繰り返した。
名前を付けるならパニック発作というところ。
そこからは、定番のホットフラッシュ。
少し動くと夕立にでもあったかのように汗が出て、これもまた昔懐かしい扇子と、ハンカチではなくタオルを持ち歩くようになり、タートルネックのセーターとはサヨナラした。
他の誰も汗なんかかいてない寒い日に1人だけ汗びっしょりで、困ったというより恥ずかしかった。
そしてある時から、ガスの元栓やコンロの火がとても気になるように。
玄関を出て歩き始めると「あれ?コンロの火、消したっけ?」
不安になって、再確認しにまた家に戻る。
絶対消したよなぁ~と思いながらも、「万が一」が気になりまた戻って玄関を開ける。
一度も消し忘れていたことはないのに、「いやもしかして?」という気持ちが頭をもたげる。
玄関と駅を行ったり来たりして、何度も何日も同じようなことを繰り返すうち、
自分でも可笑しくなってきて、出かける時は車掌のように、
「ガスよーし!」
と声を出して指差し確認をするようになった。
病名をつけるとするならば強迫性障害?
でも指差し確認をしているうちにこの症状はいつの間にかなくなった。
またある時は膝が痛くて痛くて、ちょうど子供の中学受験のためにあちこち学校見学に行く時期だったが、学校というところは階段ばかりで困ったものだった。
あとは定番の眠れない、眠りが浅い。
自分の叫び声でよく目を覚ました。
とにかくありとあらゆる、書ききれないほどのそれらしき症状が代わる代わる襲ってきたけど、更年期外来や婦人科や精神科に行こうという気にはならなかった。
若い時に、病院はもう一生分通った気がしてうんざりしていたし、子供のアレルギーのために独学で分子栄養学を学び始めていたので、自分も自分でなんとかしたかったのだ。
子供がちょうど思春期で、そちらとの闘いもあり、幸いなことにいつも気が張っていて、クヨクヨする暇がなかったとも言える。
正直言えば、かなり困ってはいたけれど、人間ってそんな時期もあるだろうと思うことにし、敢えて深刻に考えなかった。
時とともに解決することも多く、今となってもそれで良かったと思っている。
ところが、である。
先々月くらいから、更年期症状がやたらと気になり始めた。
股関節が痛くなって、腰が痛くなって、お腹が痛くなって、半日頭が割れるように痛くて、無性にイライラして、悲しくなって泣けてきたかと思うと、猛烈に腹が立ったりして、心身共に谷から上がって来れない。
いつものようにやり過ごしましょ!と思うのに、思うようにいかず、更年期症状と付き合い始めてから初めてこのままだったらどうしようと不安になった。
考えてみたら、この一年、
以前あんなに歌っていたのに歌わなくなり(ゴスペルのクワイア―にお世話になっていて、一年中スタジオやイベントで歌う機会があった)、書道のお稽古もなかなか行けず、5年続けた筋トレにも行かなくなって、仕事はほぼオンラインで、
そう、なんだか身体の中のエネルギーがうまく流れず同じところをグルグル回っているような。
世間の動きには振り回されていないほうだと信じていたけど、私の日々の行動はすっかり煽りをくらって変わっていたのだ。
そのせいか、やり過ごしていた更年期とがっぷり、四つ相撲。
うーん、土俵降りたいんだけどなぁ。
そんな時に、中学と高校の同級生でもある医師の友人が、
「僕の80代の患者は、60代の彼女が出来て、もっと男として元気でいられる薬を出してくれって言うんだよ。人生は何があるかわからないよ。」と励ましてくれた。
そうだよねー、
体調も悪いし、世の中も不穏だけど、
まだまだ人生何があるかわからない。
四つ相撲が延々と続くような気がしていた私も、何があるかわからないと思うと、密かにエネルギー発散プログラムを考える気になってきた。
その友人が、日刊スポーツで、コロナ禍のメンズヘルスを連載し、男性更年期についても解説している。
https://www.nikkansports.com/leisure/health/news/202104100000843.html
男性の皆さま、
いや女性の皆さまも、
まだまだ更年期なんてと考えてる若い皆さまも、ぜひご一読くださいませ。
オトコもオンナも忙しくても世の中が不穏でも、更年期はツラいのです。
そして、更年期に限らず、
心身の健康に重要なのは、自分のエネルギーを回して、燃やして生きていくことかなって。