【めぐり逢ひて見しやそれともわかぬ間に】

世界の真相

外が凛と冷え切って、ことさら月が美しい。

亡くなった祖母から東京の私に送られてくる手紙には、いつも月を詠んだ和歌が書き添えてあった。
原宿の学生会館の屋上で、おばあちゃんもこの月を見てるかなあと感傷に浸っていたものだ。

あれから30年が経ち、
今では、月はすっかり私にとって感傷的にさせてくれるようなシロモノではなくなってしまった。
アポロ11号はホントは月に行ったとか行かないとか、そんなレベルを遥かに超えて、月は「想像もしてなかったモノ」だったからだ。

米中対立の本当の理由は中国が月の裏側に行ったからだという識者もいる。
都市伝説じゃないかって?
いやいや、私も都市伝説であって欲しい。(今のところ、まさに信じるか信じないかはあなた次第の世界。)

30代の終わり頃、ロンドン近郊で知り合いのイギリス人の家に泊めてもらった。
その日も月が綺麗で、
うっかり、飲みなれないお酒で気分が良くなり、言ってしまった。
「日本人は月を見ると、兎が餅つきをしてると言うのよ。ほら、そう見えるでしょう?」
「へえ、そうなの?面白いね」
そんな話は聞いたこともないという感じで、興味を示してくれた。私は内心、『風流で粋な日本人』を気取ったつもりだったのだ。

大いなる勘違いだと気づいたのは、そう、2年前。
彼は良い人だから、あの時「面白いね」と言ってくれたけど、
きっと、心の中では、
「日本人呑気だと思ってたけど、ここまでだったか〜」と思ったかもしれない。
なぜなら、彼は、インターポールで仕事をしていたからだ。

本当のことがいつも知りたい私も、月に関してだけはこれ以上あまり知りたくない。兎が居るでいいんです、とりあえず。
ともかく、祖母が亡くなったあとで良かった。

綺麗な月の写真を撮る方がたくさんいらっしゃるのに、ロマンティックな気分を持てなくなった私には良い写真はまったく撮れず、毎晩Tryしてみても、
まさに、雲隠れにし夜半の月かな、である。

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