すっかり忘れていた。ボナールが好きだということを。
好きな画家を、と言われたらその中に必ずピエール・ボナール(1867〜1947)を入れていたのに。
実は長い間、絵をどうやって見たら良いかわからなかった。
感じることが苦手だから、なんとか理解しようとするのだけど、できない。
何かに心惹かれる理由を、頭で論理的に説明しようとする癖は、どうしても抜けなかった。
説明できないものを「好き」と言ってはいけない気がした。
知識はいつまでも足りなくて、感じることもままならなくて、造詣が深い友人達にはいつも気後れしていた。美学美術史学を専攻したと胸をはれることはなかった。
好きなものは好きでいいんじゃない?と何度言われても。
ところがところが。
今日ボナールの絵の前で、
ボナールが描いているところに居るような気がしたのだ。
「好き」は、その行為をしている人(絵が描かれた状況)への愛だったのね。
絵の中に入っていくことだったのね。
その時代を生きたように感じることだったのね。
今の、不自由な時期でなければ、きっと未だにモヤモヤしていただろう。
そしてモヤモヤしていることを隠していたかもしれない。
私はいつまでも他人の論理的な言葉で、自分の「好き」を説明しようとしただろう。
そう言えば。
新婚の頃笑、ボナールの版画のレプリカを飾っていたっけ。
ホコリをかぶっているだろうけど、探せば何処かにあるはず。
まあいいじゃない、好きなんだからまた飾っても笑。
好きなものと一緒にいると、愛がじわっと満ちてくる。そう、好きな理由はこれだよね。この先はこれを大切に。
画家が見たこども展
ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、バロットン は、会期9/22まで延長中。