大好きなこと

コーチング

10年以上前だが、都内の某公立中学で予備校からの派遣講師として、夏期講習を担当した。
こんなところに学校が!
と驚くような繁華街の裏手にありながら、きちんと整備された、清潔な学校だった。
そこで出会った忘れられない中学生がいる。

名前もうろ覚えだが、その少年(青年?)は、とにかく京浜急行が大好きなのだという。
どうして、課題から進路の話になったのか覚えていないのだが、
どうしても将来は京急で働きたい!
と、車両や音響、諸々を彼は熱く語ってくれた。
私は鉄子ではないので、
彼の話を正確に理解したとは到底言い難い。けれど、熱意は伝わってきた。
親がまったく賛成してくれない。だから、進路に迷っていると、彼は言った。

「JR〇海とか、JR〇日本とかなら、親は賛成してくれるの?」
「たぶん、そう」
「どうしてそう思うの?」
何度かのやりとりののち、
「私に今語ったくらい、親に京急の素晴らしさを語ったことある?」と聞くと、ないと言っていた。
親が反対する理由を、親の立場に立ってみて冷静に考えたこともなかったけれど、自分も真剣に熱意を持って語ったことはなかったと。
私はまったく大したことは言ってないのだけど、彼は「先生に会えて良かった」とアンケートに書いてくれた。
彼自身が、
人まかせにすることなく、
自分の人生に、
初めて向き合った瞬間に立ち会えて、
こちらの方が、感謝しなければならなかった。彼の瞳を忘れられないのは、そういうことだろう。
大好きなことをしたい。
だから、大好きな人にそれをわかってほしい。
それには、自分に正面から向き合う必要がある。
なぜ、彼のことを思いだしたか?
来週から、娘の学校がいよいよ本格的に再開するのだ。それで定期を買いに駅の窓口に行った。
窓口の若いお兄さんの対応や手続きが淀みなく、爽やかで、何を聞いても反応が早かった。この人はこの仕事が好きで、説明するのも楽しいのだろうと思った。
それで、あの子はどうしているだろうと、ふと思い出したのだ。
いまでは、互いに顔もわからないけれど、どこかで大好きなことをしながら元気でいてくれたらいいなと、願う。
私はどうだろう。
大好きなことをできているか?
久しぶりの北欧カフェで、流行の本を読みつつ考えてみるに、
一つ、二つ…。意外と最近はできているかもと思う。
自粛は、好きなものに気付く、
自分に向き合う大事な時間をくれたのだ、と気づいたのでした。

みなさんは、大好きなことをしていますか?

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